断食が脳をより明晰にする

 

 

 

 

こんにちは!今回のテーマは「断食が脳をより明晰にする」です。

 

 

 

脳人類と他の哺乳類の極めて大きな差は、体のほかの部位に対する脳の大きさの比率です。例えば象の脳の重さは7500グラムで、人間の1400グラムよりはるかに重いが、象は脳が全体重の40分の1を占めます。「能力」や知性のカギは、体の大きさに対する脳の大きさの割合なのです。さらに重要なのは、人間の脳が不釣り合いなほど多量のエネルギーを消費することです。人間の脳は全体重の2.5%しかないが、静止時の体のエネルギー消費量のなんと22%を消費しています。人間の脳はゴリラやオランウータン、チンパンジーなど他の類人猿の脳より、約3.5倍も多くエネルギーを消費します。だから人が脳を機能させ続けるには、食事でカロリーをしっかり摂る必要があります。幸い私たちは、食料難のような過酷な状況でも生き延びられるよう、技能や知能を発達させてきました。人間は計画を立て、将来に備えることもできます。加えて、自らの脳の驚異的な能力をより理解すれば、どんな食事をすれば脳にいいのかもわかるのです。人体の重要なメカニズムの一つが、飢餓状態の時に脂肪を「生命維持に必要な燃料」に変える能力です。人は脂肪を「ケトン」という分子に分解することができます。断食が脳を育むという、一見矛盾する理屈が生じるのはこのためであり、さらにこのことから、人類学上の熱い論争の説明もつきます。

 

 

 

その論争とは、なぜ人類の親戚であるネアンデルタール人は3万~4万年前に地球上にいなくなったのかという疑問です。ネアンデルタール人はかしこいホモ・サピエンスに「消された」とするのが無難なようだが、いまでは多くの学者が、絶滅のおもな原因は食料難ではないかと考えています。それは、ネアンデルタール人は脂肪を利用して脳に栄養を与える生化学的経路がなかったので、生き抜けなかったのかもしれないのです。他の哺乳類の脳と違って、人間の脳は飢餓の際、代わりのカロリー源を用いることができます。通常は毎日の食事によって、脳にブドウ糖が燃料として供給されます。食間にも脳には引き続きブドウ糖が安定して供給されるが、このブドウ糖はおもに肝臓と筋肉のグリコーゲンを分解して作られます。

 

 

 

だがグリコーゲンの蓄えは、同量のブドウ糖しか供給できません。蓄えがなくなると、代謝が変わり、新たにブドウ糖の分子を、おもに筋肉にあるタンパク質のアミノ酸からつくるようになります。この過程はその名も「糖新生」といいます。プラス面では、これによって必要なブドウ糖が器官に与えられるが、マイナス面では筋肉が犠牲になります。筋肉を消耗してしまうことは当然好ましいことではありません。ところが人間には脳を働かせる生理学的しくみがもう一つあります。食糧がもはや手に入らなくなって三日ほどたつと、肝臓が体内の脂肪を使って、特別な脂肪「ケトン」を作り始めます。このとき、βヒドロキシ酪酸が脳の為の非常に効率のよい燃料源となって、食料難の間も長期間、認知機能を保つのです。こうした代わりの燃料源のおかげで、「糖新生」に頼ることが減り、その結果筋肉量が保たれるのです。

 

 

 

ケトン

 

 

 

 

研究ではカロリーで制限によって活性化される、脳にも体にもよい効果をもたらす遺伝経路の多くが、たとえ短期間の断食でも同じように機能することが証明されています。これは将来の「断食をすると代謝が低下し、体が飢餓モードに入るため、脂肪を保ち続ける」という考え方とはまったく逆です。断食は実際には減量を促し、脳の健康も高めるという全身への効果があります。

断食

 

 

2009年1月、「米国科学アカデミー紀要」にある研究論文が掲載されました。その研究とは、ドイツの研究者たちが二つの高齢者グループの比較を行ったものです。片方はカロリーを30%減らし、もう片方は何でも好きなものを食べてよしとしました。研究者たちは二つのグループの記憶機能に差が出るかを調べ、3ヶ月の実験を終えての結論は次のとおりでした。

 

 

 

カロリー制限食事療法のグループの記憶機能はかなりの向上が認められました。一方、制限なしで自由に食べられる人たちは、小幅ながら記憶機能低下の特徴がはっきりと見られたのです。研究者たちは、脳の健康に対する、現在の薬によるアプローチが非常にかぎられていることに触れた上で、「この研究結果を利用すれば、高齢化に際して認知面の健康を維持するための、新たな予防と処置方法が開発できるかもしれない」と結論づけました。

 

 

 

多くの人が、アルツハイマー病は遺伝としてDNAから受け継がれるものだと思い込んでいます。しかし、この研究でそうでないことが判明しました。「疾学的データからわかるのは、摂取カロリーが少ない人は脳卒中や神経変性疾患のリスクが軽減するかもしれないということです。食物消費とアルツハイマー病や脳卒中のリスクの間には強い相関関係があります。データからは、日常的に摂取カロリーがとりわけ少ない人は、アルツハイマー病やパーキンソン病のリスクが極めて低いということが分かります」

アルツ

 

 

マットソン博士はナイジェリア人の家族を対象にした研究についても述べています。一家のうち何人かが米国に移住した家族を対象にした研究です。米国に移住しているナイジェリア移民におけるアルツハイマー病罹患率は、ナイジェリアに残った親族に比べて増えていました。遺伝子上は移住したナイジェリア人もナイジェリアに残った親族も同じでした。変わったのは環境、ことにカロリー摂取だけです。研究で明らかになったのは、高カロリー消費が脳の健康に有害な影響を与えているということです。  

 

 

 

一度みなさんも減量を促し、脳の健康も高めるという全身の効果がある「断食」をしてみてはいかがでしょうか?(^O^) 

参考著書 「いつものパン」があなたを殺す                                          

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