オーラルフレイルと認知症との関係
フレイルとは「高齢者が、身体だけでなく社会性も精神面も弱っていくこと」を指しています。
フレイルに先がけて、口まわりの“ささいな衰え”と呼ばれる食べこぼしや、むせなどがオーラルフレイル(口の虚弱)でフレイルの前段階の現象として見られるものです。
自分の歯が残っている人、残っていない人で健康状態はどう違う?
自分の歯が残っていない人の特徴のひとつに認知症になりやすいということがあります。
上の図は歯の数、義歯(入れ歯)の使用と認知症発症との関係を表しています。
認知症の認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象に4年間の観察研究を行った結果によると、性別・年齢・生活習慣などにかかわらず、「自分の歯がほとんどなく、義歯を使っていない人は、自分の歯が20本以上残っている人にくらべて、1.9倍も認知症の発症リスクが高い」ということがわかっています。
さらに「自分の歯がほとんどなくても、義歯を使って歯のない部分を補っていれば、認知症の発症リスクを4割ほど抑えられる可能性がある」ということも報告されています。
また、自分の歯が20本以上残っている人をハザード比(認知症の発症リスク)1.00としたとき、「自分の歯がほとんどなく、義歯も使っていない人は、自分の歯が20本以上残っている人にくらべて、ハザード比が1.85、さらに、「かかりつけの歯科医院がない人は、かかりつけの歯科医院がある人にくらべてハザード比が1.44、口腔衛生の心がけがない人は、口腔衛生の心がけがある人にくらべてハザード比が1.76と自分の歯が20本以上残っている人とくらべると認知症の発症リスクが高くなっています。
噛むことの大切さ
噛むという動作には、舌の筋力をきたえたり、唾液の分泌をうながしたりするだけでなく、脳の働きを活発にする効果も認められています。そのため、歯や口腔の疾患(う蝕、歯周病など)やオーラルフレイルなどの影響で、噛むという動作に支障が出てくるようになると、間接的に認知症の発症リスクを高めてしまうことにもなるのです。
オーラルフレイルの人が全員、認知症になるとは限りませんが、「自分の歯でよく噛んで食べる」ということは、認知症予防に少なからず影響しているといえるでしょう。
参考著書:オーラルフレイルQ&A 口からはじまる健康長寿
平野浩彦 飯島勝矢 渡邊裕