時間栄養学とアンチエイジング

体内時計のライフステージ別の調査研究によって、高齢者の体内時計の特徴が明らかになり、適切な生活リズムによって体内時計を正常に保つことは健康寿命の延伸につながるものと考えられています。一方で、体内時計の乱れによって老化を進行させるという報告もあります。

そして最近になり、体内時計と食・栄養の関係を調べる「時間栄養学」が注目されています。

「時間栄養学」とは、「なにを、どれだけ」に加えて「いつ食べるか」を考慮した新しい栄養学です。この「時間栄養学」にもとづきながら、より健康になるための食事のポイントをご紹介いたします。

 

食べる時間を変えると体重が変わる!?


米国のパンダラボの研究がマウスを用いて、同じ量の同じ高脂肪食であっても、24時間「だらだら食べ」をしていると太り、メリハリをつけて食べると太らないことを証明しました。この2群の違いは何かというと、体内時計の深さです

食事時間が規則的だと、活動時間帯と休息時間帯がしっかり分かれており、24時間綺麗にリズムを刻んでいます。

一方で、「だらだら食べ」では、リズムの振幅が小さいです。これにより、代謝経路の時間的切り替えが起こりにくくなり、脂質合成ばかりが進んでしまうことで肥満に繋がりやすくなります。食事にメリハリをつけることは、規則正しい生活につながり、生活習慣病を未然に防ぐことができます。さらに、生活習慣病がもとである認知症を防ぐことにもつながります。

 

 

【糖尿病予防の観点から】

インスリン(糖の吸収を遅らせる物質)には日周リズムがあり、朝に高く、夜に低くなります。インスリンは血糖値

を下げる働きがあるので、同じ量の食事を朝昼晩と摂取した場合、血糖値の上昇は夜がもっとも大きくなり、朝がもっとも小さくなります通常の日本の食生活では、3食のなかで夕食の量がもっとも多い傾向にあることから、仕事が終わってからの夜遅い食事は、血糖値を一気に上昇させてしまう原因の一つです。

 

~メリハリをつけるために~

 

*朝ごはんをしっかり食べて、体内時計をリセット

体の中では毎日体内時計をリセットする必要があります。それに有効なのが、朝の光と朝食。人間の体は、日中は摂り込んだ栄養をエネルギーに変えて活動しやすい状態にし、夜は脂肪を蓄えるようになっています。なので「夜食は太る」と言われています。

 

*“夜どっさり”をやめて、3:3:4の配分

『時間栄養学』では、「栄養バランスのよい朝食を必ず食べて、3食のカロリー(熱量)配分は朝:昼:夕=3:3:4」が望ましく、夕食が21時を過ぎるようなときは1食を分ける「分食」をすすめています。たとえば、夕食の主食(炭水化物)分は夕方におにぎりなどで摂り、夜帰ってからは野菜中心のおかずを食べるというものです。

 

 

食べる順序と速度


「時間栄養学」の進歩で、食べる時刻はもちろんのこと、①食べる順序 ②速度が健康に大きな影響を持つことがわかってきました。

 

①食べる順序  野菜などをご飯よりも先に食べる!

血糖値が急に増えると、すぐにインスリンが分泌され、血糖を脂肪に変えてしまいます。

また、インスリンが急激に上がると、しだいに膵臓の機能を弱めて、長い間に糖尿病の原因ともなります。これを防ぐために大変有効な方法です。

 

②食べる速度  「一口30回」より 「食卓に箸置き」

食事の際、一口30回かむなどゆっくり食べることはインスリン分泌を抑える上で大変有効ですが、30回数えて食事をしても美味しく感じないかもしれません。

当院では、「食卓に箸置き」を推奨しております。箸を置いて食べることで、数えなくても 自然とかむ回数が増え、ゆっくり食べることができます。

 

従来の「何を」「どれだけ」食べるのかの考えに加え

「いつ」「どのように」食べるかの時間栄養学を考えましょう。

 

  • 参考文献

日本抗加齢医学会 「時間栄養学とアンチエイジング」

kewpie https://www.kewpie.co.jp/recipes/information/vegetable/vegefirst/