今回の健康ブロブは「習慣」についてです。
この絵は、画家ビーテル・ブリューゲルが1567年に描いた絵、「怠け者の天国」です。
中央で寝ころがっている3人の男はなにもしていなくても食べ物が自然に口に入ってきて、何もする必要のない世界に住んでいます。
ローストされた豚とゆで卵がナイフ付きで走りまわり、ワインは口の中に自然に落ちてきます。
左奥に見える小屋の屋根はヴラーイ(丸いタルト)で葺かれ、男は口をあけて焼き鳥が飛び込んでくるのを待っています。
「怠け者の天国」は、なんの努力もなく食べ物がどんどん口に入ってくる世界がいかに愚かなものであるかを風刺した絵です。
当時、下ごしらえも調理もなしに食べられる食べ物はほとんどありませんでした。
それどころか、この絵に描かれているどの食材もふんだんにあったとは考えられません。
空腹と飢えが日常で、満腹と飽食は貴族だけの特権だったはずです。
庶民は食べること、生きることに必死でした。その時代に、人間が持つ3つの大罪、怠情と美食と大食をこんなに楽しい絵で表現してくれました。
かつては貴族だけの特権であった便利で飽食が当たり前の現代社会で自分を律するのは450年前と比べてさらに難しくなっています。
「習慣が変われば人生が変わる」
これは2500年前に古代ギリシャの哲学者アリストテレスが言った言葉です。
僕自身がこの10年自分の習慣に向き合い続けて、しみじみ響く言葉です。
習慣をどのように自分のものにするかできるかを考えて、まず皆さん自身が行動変容にトライして頂きたいと思います。
どのような行動も習慣になるまで、必ず以下のようなスッテプで進みます。
例えば、歯磨きをするしぐさをしてみてください。おそらく慣れたものなので、ほかの事を考えたりしながら、ほとんど無意識に歯磨きができるはずです。
これが図の④無意識に「やっている」段階です。では、次は反対の手で磨くしぐさをしてみてください。
何か違和感があるのではなでしょうか。「ちゃんと磨けているか」「毛先が届いているか」といろいろ考えて、磨いているのではないでしょうか。
これが図の中の意識的に②「知っている」から③「できる」の間の状態ということになります。
習慣を身につけるためには、①無意識の「知らない」ことを意識的に②「知っていること」③「できること」をへて、④無意識に「やっていること」へ押し上げる必要があります。
そこで、一番重要になるのが、最初の段階の①無意識の「知らない」部分です。無意識とは潜在意識です。
潜在意識は皆さんの人生の様々な経験によって構築されていて、あなたにとって「安心安全第一で働く」という特徴があります。
ですから、長い経験によって安心安全第一を優先して、形成された潜在意識は基本、「現状維持」を好みます。
習慣化を成功させるためにはこの潜在意識の安心安全の欲求を満たしながら進めることが肝心です。
他人からのアドバイスを実行することを、頭では正しいとわかっていても、なかなか実行できないのは、この潜在意識の強烈な抵抗にあうからです。
では、どうしたら潜在意識の安心安全の欲求を満たしながら、習慣化を成功に導いていくのでしょうか。
超簡単です。なるべく苦痛の感情を作らないようにして、頑張りすぎないことです。
そして、一つのことに集中することです。複数のことを習慣化したい場合も優先順位を決めて、なるべく一つに絞って、取り掛かることが肝要です。
そして、一つの小さな成功体験を経験することで自己効力感(自分もやったらできるという感覚)が生まれ、さらなる行動変容を助けます。
また、最初の段階で最も重要なことは「成果を上げること」ではなく、「定着させること」です。
例えば、ウォーキングであれば、苦痛をともなって、なんとか毎日5キロの成果を上げるより、毎日300メートルでも楽に定着させることが一番重要です。
3か月続いて物足らなくなったら、距離を少しずつのばせばいいのです。
このように潜在意識が安心している状態をうまく維持しながら、①「無意識で知らないこと」から段階的に④「無意識にやっていること」へ潜在意識のプログラムを時間をかけて変えていきます。
そして大事なことは、無意識にできるようになるまでの過程を楽しむことです。
アリストテレスの言葉「習慣が変われば、人生が変わる」を思い出しながら、健康習慣を少しずつ楽しみながら、あなたの人生を、よりよい人生に変えてみましょう。