香港が2年連続で男女ともに平均寿命世界一となり、注目を集めています。世界有数の長寿国である日本も及びませんでした。この香港の長生きの秘訣を紐解いてみましょう。
香港のお年寄りの一日は公園で軽い運動に始まります。この写真は僕が友人と香港に小旅行に行った際に朝、ジョギングがてら公園に立ち寄った時に撮った写真です。車いすの人も体操していたのにはびっくりしました。軽い運動の後、お茶をしながら、会話を楽しみます。
また香港ではお金や保険の有無に関係なく、西側諸国と同じ水準の医療が受けられることも長寿の理由の一つと言われています。住民IDカード保持者は公立病院の一般・専門外来を50~135香港ドル(約700~約2000円)で受診でき、75歳以上の低資産者は基本医療費が無料。65歳以上の住民には年間2千香港ドルの医療チケットも配布させてます。喫煙率も15年時点で10.5%(日本:男性28.2%、女性9.0%)と低水準です。
さらに香港人はお年寄りを敬い、家族の絆が強いそうです。狭い土地に多くの人が暮らす人口過密都市ですが、家族の行き来には便利で、週末に一家で飲茶を楽しむ光景もよく見られます。親と別居していても親元にいつでも駆け付けられるし、親孝行もできるということです。また、お年寄り同士の友人も頻繁に会いに行くことができ、孤独を感じることも少ないそうです。
実は、人との関わりやひきこもりが特に高齢者の健康度と大きく関係していることがわかっています。香港が人口過密都市ということは、裏を返せば、不衛生で、公害、大気汚染などのリスクをはらんでいます。中国からの黄砂やPM2.5の影響を日本よりはるかに影響を受けるはずです。しかし日本をしのいで長寿世界一を達成している背景には、外的環境因子よりもいい人間関係が健康に影響を及ぼしているからだと考えます。
そして、実はかかりつけ歯科医を持つことは人間関係やひきこもりと関係があります。かかりつけ歯科医の有無と外出頻度や友人、近所付き合いを調べた研究があります。下の表のように、「外出頻度」では、かかりつけ歯科医を持つ群では、男性50.9%、女性38.2%が「ほとんど毎日外出する」と答えました。これはかかりつけ歯科医を持たない群の男性47.1%、女性30.7%を有意に上回ります。逆にめったに外出しないと答えた人はかかりつけ歯科医も持つ群では、男性4.5%、女性5.9%であるのに対して、かかりつけ歯科医を持たない群はそれを大きく上回り男性8.8%、女性15.6%という結果になりました。これはつまり、「かかりつけ歯科医も持つほど、外出頻度が高い=お出かけ好きである(ひきこもらない)」ということを示しています。
「友人、近所付き合い」に関しては、かかりつけ歯科医を持つ群で「ほとんど毎日」と答えた人が男性13.3%、女性14.3%に対してかかりつけ歯科医も持たない群では、男性11.1%、女性10.7%であり、これも有意差がみられました。
事実、下の図のようにかかりつけ歯科医を持つ群は持たない群と比べて、長生きすることもわかっています。
日本は歯科の定期健診受診率が世界的に見て低水準です。全国の歯科医院が定期健診に力を入れて、国民の歯科定期受診の関心がもっと高まれば、香港から長寿世界一の座を取り戻す日も遠くないかもしれませんね。
参考資料 香港、平均寿命世界一:福島民友(共同)2017/12/17
なぜ、「かかりつけ歯科医」のいる人は長寿なのか?:星 旦二