「疲労」とは生体アラームのひとつ
「疲労」とは、医学的には、「痛み」「発熱」と並んで人間の生体アラームのひとつと考えられています。つまり、「これ以上、運動や仕事などの作業を続けると体に被害が及びますよ」という警報です。人は痛みや熱があると休息しようとしますが、もしそれらの警報を発することができなければ、死に至るまで作業を続けてしまう恐れがあります。その危険を回避するために、痛みや発熱と同様に疲労という警報を発し、それ以上の活動を制限するように働いています。疲労はアラームである以上、通常、疲労感をもって自覚します。疲労には以下のような症状があります。
疲れの原因は「活性酸素」
近年、活性酸素が老化や生活習慣病、シミ・シワ、白内障などの原因になるということがわかっており、どこかで耳にしたことがあると思います。呼吸で取り入れる酸素のうち、1~2%はこの活性酸素に変化します。活性酸素は強力な「酸化」という作用をもっていて、細胞や組織を壊していきます。仕事や運動などの疲れを感じる活動で大量のエネルギーを使うと、酸素の消費量が増えて活性酸素が大量に発生します。脳内の神経細胞などが活性酸素で酸化されると、細胞内から老廃物の一種が排泄されます。その老廃物の増加がシグナルとなり血液中などに疲労物質が増加します。そして、「活性酸素が細胞を攻撃して疲労物質が増えてきた」という情報が、大脳の眼窩前頭野という部位に伝わって疲労感が表出するようになるのです。
忙しく働くビジネスパーソンが危険
「ランナーズ・ハイ」という言葉をどこかで耳にしたことがあると思います。長い距離を走るトレーニングを続けているとき、あるポイントを超えるとそれまでのつらさが消え、高揚感に変わる現象をいいます。そのときに脳内では、疲労感や痛みを消すための物質が防御的に分泌され、その結果、多幸感や快感に似た感覚が引き起こされるのです。これが疲労感のマスキング作用です。日ごろから仕事にやりがいや達成感がある、あるいは上司や同僚からの賞賛、昇進といった報酬が期待できて楽しく仕事している、仕事に生きがいを感じ、休む間もなく忙しく働くビジネスパーソンは過労死のリスクが高く、「ここしばらくは脳や体を酷使していなかったか。本当は疲れていないか。少しでも何らかの疲れのサインは出ていないか」を自ら慎重に向き合って、疲労感のマスキングをしすぎていないかを判断する必要があるのです。
では、私たちは「疲労」と「疲労感」にどう向き合っていけばいいのでしょうか。
次回のブログでは疲労に対する対策「睡眠」と、疲労感に対する対策「ワーキングメモリ」についてご紹介します☞☞☞
参考著書:すべての疲労は脳が原因 梶本修身