こんにちは!今回のテーマは日本人の食物繊維摂取量についてです。
国立健康・栄養研究所の池上幸江先生は、食物繊維成分表と国民栄養調査から計算した日本人の食物繊維摂取量を水溶性と不溶性に分けて表にしています。食物繊維全体では、1947年には1人あたり1日27gあったものが、1995年には16gになり、現在では半分以下の12gにまで減っています。特に1960年代の高度経済成長期に大きく低下し、その後は若干の変動はあるものの、今日まで少しずつ低下しています。その要因としては穀類の摂取量の減少と、穀類の精白度が増したことが考えられます。
また日本人の野菜摂取量も減り続けており1985年には年間1人あたり110.8kg食べていたものが、1999年には102.3kgになりました。参考までにアメリカ人の野菜摂取量を見てみると1985年以来増え続けており、95年以後は日米の1人あたりの野菜摂取量は逆転してしまっています。アメリカ人の野菜摂取量が増えた結果、アメリカ人の全がんの発生率は減少に転じているが、日本では全がんの発生率が増加傾向のままです。これらの調査結果から腸内細菌の量も減っていると考えられます。なぜなら腸内細菌は食物繊維をエサにしているからです。腸内細菌が減ってしまったために日本人の免疫力が低下し、がんの発生率が増え、アトピーなどのアレルギー性疾患やうつなどの「こころの病」が増えてきたのでしょう。
次に諸外国の食物繊維摂取量を比較してみましょう。各国の食料需給表を用いて、エリザベス・ブライト=シーという学者が計算した表があります。この表によるとメキシコ人が最も多くの食物繊維を摂っていることが分かりました。日本人の実に3倍です。驚くべきことに日本は食物繊維摂取量がむしろ少ない国に属していて、ドイツやアメリカとほぼ同じです。そのほか食物繊維の少ないのはスウェーデン、オランダ、フィンランド、イギリス、スイスといった国です。
「5年間で16万人」。これは一体何の数字でしょうか?実は、自らの命を絶ってしまった日本人の数です。物質的な豊かさは世界有数で、一見すると幸せに満ちているように思える国でなぜ自殺してしまう人が多いのでしょうか。これについては、近年の日本人の自殺者の増加が失業率と連動していることから自殺の主な原因として不況を挙げる人も多い。しかしこのような傾向は他の先進国では見られません。かつてスウェーデンの失業率は日本の1.5倍でした。世界中が不況に見舞われているなか、スウェーデンの失業率もやはり2%から8%台に上昇しました。しかしその自殺率は日本の半分になっていたのです。つまり不況を自殺者数の増加の理由にすることはできないのです。また国民がほとんど自殺をしない国もあります。それは、経済的には常に困窮しているといってもいいメキシコです。自殺率は日本の6分の1以下で、世界で最も低い位置にいつづけています。では日本とメキシコの違いはどこにあるのでしょうか。それは腸内細菌でしょう。腸内細菌のエサである食物繊維を世界で最も多く摂取している国がメキシコです。食物繊維は腸内細菌のエサとなって腸内細菌が増え、結果的に免疫力が上昇するのですが、私たちはストレスを受けると体内にコルチゾールが増えます。コルチゾールは副腎皮質から分泌され、糖代謝、タンパク質や脂質の代謝にも関与する、生体に必須のホルモンなのだが、分泌される量によっては、免疫機能を担っているNK細胞活性が低下してしまうのです。しかし食物繊維を多く摂っていると、NK細胞の活性低下が見られなくなることが明らかにされています。つまり食物繊維によって、「生きる力」が増強されているのです。
メキシコ人は毎日のようにサルサソースとしてトマトを食べてきました。自殺率が低いのはトマトに含まれているリコピンが大きな働きをしていると言えます。リコピンは強力な抗酸化力を持ち、精神の安定に役立っています。またトウガラシに含まれるカプサイシンは粘膜の分泌を促し、体液の循環を盛んにさせます。さらにカプサイシンが痛覚を刺激するため、脳に痛みの信号が伝わり、体内鎮痛用のエンドルフィンを分泌させるのです。これが逆に体に快感を与え、こころに溜まったうつさえも和らげるのです。
これからの日々の食事に食物繊維を多く摂り入れてみてはいかかでしょうか?(^O^)
参考著書 こころの免疫学